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やわらかな 日々

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化学とファンタジーのはざま

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モズと目が合う瞬間



雪虫が飛ぶ午後
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今にも雪が降りだしそうな空気に中に、頼りなげに舞って、ろまんちっくな雰囲気を漂わせてますが
正体はアブラムシだからね。 羽の生えたアブラムシ!

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正式名称はリンゴワタムシ
おしりに白いふわふわしたものを纏って、「雪の妖精」とか呼ばれてるそうだけど

リンゴの木の害虫!
(すべてのロマンチックをぶち壊したい人)





戦後、日本に入ってきたセイタカアワダチソウは侵略的外来種ワースト100に選ばれ、一時期は花粉症の原因とまで言われた。
その繁殖力の強さの理由の一つに、根から植物の発芽を抑制する成分を分泌し、ほかの植物の発芽をさせないことにもあるという。

それを初めて聞いたとき、な、なんと恐ろしい植物!と思ったんだけどー。
近年「思ったほど増えていない」らしい。 どうやら、その抑制成分が自らにも効いてしまったからだとか?
花粉症の原因だって、実は風媒花でなく虫媒花だから花粉は重くて飛びにくい。同時期に日本に入ってきたブタクサこそ真犯人だった・・とか。
なんとまあ、ずいぶんな言われような植物だったこと。

と、秋の終わりごろのセイタカアワダチソウの群落を眺めて思ったのだった。


そんな折、図書館の新刊コーナーで面白い本を見つけた。

植物たちの静かな戦い

植物も生存競争があり、競争相手に勝つための手段として、積極的に攻撃する植物がある。
そのひとつがアレロパシー(他感作用)である。アレロパシーは、植物がアレロケミカルという化学物質を生産し、体外に分泌して、自分の周囲でほかの植物の成長を妨げたり、微生物、昆虫、小動物などの害を避けようとする作用であり「植物による静かな戦い」であるといえる。
(まえがきより抜粋)

外来植物のアレロパシーに関する研究は、セイタカアワダチソウのアレロパシーの論文から世界各地で進んだそうよ。

アレロパシーは他の生物の成長を阻害するだけでなく、促進する関係や、促進でも阻害でもない何らかの働きもあるという。
まあ、まだまだ研究中ってとこでしょうか。

で、あらゆる植物にそういった化学成分があって、それを利用した生態系や農業との関係についても本書は書かれている。
昔からこの作物とこの作物を組みあわせると害虫が付かないとか、雑草を生えにくくする方法とか、連作ができないものとかは、長年の経験や研究からなされているが、
それを、より科学的根拠をもって証明しようとする。

化学用語や化学式は理解できないけれど、子供が大人の本だなから抜きとって難しい漢字を飛ばしながら読むように読んでみる。

わからないなりに面白いと思える箇所を少し。

アレロパシーが強いというと、ものすごく生命力が強く、ガンガン繁殖する植物を思い浮かべるが、日本固有種のオキナグサはもっとも強い生育阻害成分を含んでいるにもかかわらず、絶滅の危機に瀕しているのだそうで、その原因は山野草としての人気から、採集と売買に拍車をかけたと指摘されている。
体内に強い抗菌性物質やアレロケミカルを含み、静かな戦いに有利なはずなのに、オキナグサ自体は成長がきわめてゆっくりしており、多年生で一度掘り取られると再生することができない。
そういう成長が遅く弱い植物が身を守るための武器がアレロパシーでもある。

雑草という定義について、アメリカ雑草学会(そういうのがあるんだって)では「人類の活動と幸福・繁栄に対して、これに逆らったり、これを妨害するすべてとする植物」といういかにも人間中心の定義があり、
それに対して日本では昭和天皇の有名なお言葉「雑草という草はない」と、戦後人手が足りなく、御用邸のお庭の手入れが間に合わなかったことを侍従が謝ったところ「雑草という草はないのですよ。どの草にも名前はあるのです。そしてどの植物にも名前があって、それぞれ自分の好きな場所を選んで生を営んでいるのです。人間の一方的な考えでこれを切って掃除してはいけませんよ」といわれた侍従の記載をあげている。


科学者の、すべてを化学で証明しようとする姿勢には、やや無機質で冷たい印象をもってしまいそうであるけれど、こちらの本は昭和天皇のお言葉のような、植物に対する愛情を感じる。
そして、すべての植物との共存共生を強く望んでいるようにも思える。

全く化学に疎くても、そういった姿勢が垣間見られるところに、読み進める楽しみがあるし、うちの畑でも試してみようかなと思えるものもあったり、化学への興味もわく。

とはいえ、長年ファンタジーも信じている自分だし。
例えば、先日山で迷子になったお子が無事保護されたときも、気温が高かったからだとか、いろんな根拠を挙げられて、もちろんそうであったのだろうけれど、木や森の動物を含め山の神様が守ってくれたのだと思いたい。
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「おねがい!メイのところに連れてって!」
といったわけでないけど木はよける。
(クヌギの木を避けてるの)

















Commented by africaj at 2016-12-09 23:02
セイタカアワダチソウ、私も子供の頃やたらと悪い草って聞かされて、あいつかーちきしょー!!って思ってましたよw
濡れ衣?冤罪だったの?汚名返上にこんなに時間かかるなんて(同情)

私はトマトを育てると、そういう昆虫を寄せ付けない成分出してるのを感じる。
そら豆は、元気なくなった途端に真っ黒なアブラムシに覆われて枯れていくから、逆にそうじゃない時何か出してるんだなーって。
他感作用かー。面白いですなー。

で、雪虫ってアブラムシだったんだ!!ショック。
Commented by vinge at 2016-12-10 17:56
☆Africaさん

でしょー!?めっちゃ悪者扱いだったよねー。
侵略的外来生物・・ってものすごく悪そう~。でももっとも侵略してるのは人間なのよ~。開発と乱獲が根こそぎ壊してるもの。悲

そうそう!植物が弱ってくるととたんに虫がつくよねー。
あらゆる植物が、動けないけど生き抜く術を持っていて、か弱いものほど強いものを持って身を守っているとか、植物ますます面白いです~。

雪虫~。ふふふ~。アブラムシってカメムシ目なんだってー。私はそれがちょっと意外だったよー。
by vinge | 2016-12-07 22:26 | ほんのはなし | Comments(2)