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やわらかな 日々

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空飛び猫

空飛び猫 (講談社文庫)

アーシュラ・K. ル・グウィン / 講談社



このお話は3年ほど前に、ぽーこがまだ「英語」どころか「アルファベット」すら曖昧だった時期に、ペーパーバックで買ってきて、「訳してみる」と大暴言を吐いたことから知ることになる。

表紙には「英検準2級レベル」とかかれたシールが張られていたけど、ぽーこにはその日本語も読めなかったらしい。。

そして、図書館で「和訳」された本を見つけたときも、
「絶対読まないし、母さんも読んではならない!!」と厳しく言われた。。

そう、ぽーこは母さんのお口が「非常によくしゃべる」ということを、よくよく知っているので、読んだら絶対に中身を話すと思っているからだ。

そして、一年が過ぎ、2年が過ぎ・・・・一向に
「読み終わったよ」といわないので、こっそり覗いたら、お話の半分くらいのところで放置されていた・・・・

空飛び猫_a0158478_1544785.jpg


内緒で、遠めにこっそりね↑ 

「やっぱり難かしかった??」と聞くと
「ううん。。。。。。。お話がつまんなくなってきたから、やめた。。。。。」と・・・・・・

どこまで、負けず嫌いなやつなんだか!008.gif

というわけで、このお話の中身に関していまだに誰も知らないわけなんだけど・・・
ひょんなところで、また出会うことになった。

猫だましい

河合 隼雄 / 新潮社



猫の本(お話)に関してのエッセイで、「空飛び猫」が取り上げられていたのだ。
そして、これを訳したのが「村上春樹」であること、内容に「PTSD」に関係したことが書かれていることなどを知った。

村上春樹さんといえば「アンダーグラウンド」など書かれたように「PTSD」にも関心を持っておられるので、この「空飛び猫」に関してもそういう観点でと思われ、河合さんは対談を望んだのだが、村上さんに答えてはいただけなかったそう・・・

まとめるのが下手なので、以下はわたしが気になった部分だけの抜粋になるけれど。。

この「ある日、翼を持った子猫が生まれる」という、ありえないことからはじまるお話。

ファンタジーの本質は 「なぜなしに存在し、なぜなしに納得させられる」ことではないだろうか。
子猫の母親でさえ「さっぱりわけがわからないのに」、子供たちに翼があり、この本を読むとわたしなど『そうだそうだ』と納得してしまうのだ。
そんな馬鹿なという人は、人生を真剣に生きていない人である。
中世ヨーロッパの大賢人、マイスター・エックハルトは、人間は『なぜなしに生きる』と喝破している。
何のためとか、なぜなどということはない。人間はなぜなしに生きているのだから、人生を語るファンタジーは、なぜなしに成立する。


しかし、人は現実にはなにかにつけ「それは、なぜどうして?」と理由や原因を求めたがる。
そこで、問題の「PTSD」につながっていくのだけど。。
「PTSD」に限らず、さまざまな心理療法においても、河合さんは「なぜなし」療法を挙げている。

実は、「空飛び猫」のなかでの「PTSD」は過去のトラウマからしゃべることが出来なくなってしまう猫が出てくるのだ。しかし、その猫は他の猫の「心理療法」によって、しゃべることができるようになるのだ。
それは、「なぜしゃべれなくなったのか」それにはちゃんと答えがあり、そのわけがわかったためにその猫は治り、めでたしめでたし。。。。となる。

それを、河合さんは「あれれ?」といっている。
「なぜなし」なはずのファンタジーが「なぜあり」で終わっているからだ。
そして

人により好みはあるだろうが、わたしは困難な場合は、なぜなし療法のほうが効果的と思ったりしている。
そして、なぜなし療法をやってるつもりが、終わってみると「なぜ」に対する答えが見つかったように感じる時もある。こんなわけで、「なぜあり」ファンタジーや物語が、間違っているとか、浅薄という気はまったくない。
ただ、困るのは、その話に感動するあまり、それが物語りであることを忘れ、それを「法則」のように考えて「適用」しようとすることである。
そうなると、それはシンリ教になる。


実際、「空飛び猫」の中でやった療法は、「PTSD」の療法として専門の本にも書かれているし、阪神淡路大震災の後も、こどもたちにそのときの「絵」や「作文」を書かせたりしている。
体験を言語化させれば治るというような単純な「法則」に頼ろうとしている。
それは「明らかな間違いである」と河合さんは言い切る。


数年前に、この本も空飛び猫も、「PTSD」の療法も何も知らずに(PTSDすら知らず)
「なぜ?」「なにが??」と閉じ込めた過去を問い詰めたことがある。

それが「記憶の中での再体験」になってしまい、より深く傷つけてしまった経験を思い出す。
体験の言語化どころではない。
「なぜ」はいらなかったはずなんだ。。。


「明らかな間違いだった」と、胸がちくちくと痛い。。。。
Commented at 2010-01-16 12:42 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by vinge at 2010-01-17 15:00
☆鍵コメさん

いらっしゃませ!きてくださってありがとう~~!
そうそう、そういうことだよね。
わたしも次に書いてみるよ~。
by vinge | 2010-01-15 16:48 | ほんのはなし | Comments(2)